タイアップ広告の市場拡大、PRにインフルエンサー活用
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(株式会社GROVE代表取締役の北島惇起さん=11月30日午後、東京都渋谷区)
マーケティングに、ネット上で影響力をもつ「インフルエンサー」を活用する動きが広がっています。多くのフォロワーを抱えるYouTuberやInstagrammerらに自社の商品やサービスをアピールしてもらい、認知や購買などにつなげることが狙いといいます。インフルエンサーと企業をつなぐ代理店への問い合わせも増えているそうで、タイアップ広告の市場は今後も拡大する見通しです。
インフルエンサー・マーケティングに熱視線
タイアップ広告にYouTuberらを起用
市場規模は右肩上がり、株式会社GROVE・北島代表
(企画:久保田 潤)
「(インフルエンサーを活用したタイアップ広告では)2015年当初と比べ、自社売上額の成長率は約1100%を超えています」。こう語るのは、株式会社「GROVE」の代表取締役、北島惇起さん(31)。芸能事務所ワタナベエンターテインメントで過去にお笑い芸人をしていたという異色の経歴の持ち主で、現在はインフルエンサーと企業をマッチングさせる事業などを行うGROVEの最高経営責任者(CEO)を務めます。
急増する問い合わせ、過去3年間で同業者も拡大
インフルエンサーを活用したタイアップ広告の配信を考える企業からの問い合わせについて、北島さんは「(15年では)1カ月に1件あるかないか」と振り返り、「(18年では)月に約30~40件に増えた」と話します。また依頼を受けた案件の数に関して、「今年は月平均で約80件(11月末時点)。一方15年では5件前後だった」と述べ、「会社もよく持ちこたえたなあ」と苦笑いを見せました。18年は1カ月に案件が100件を超える月もあったといいます。同年は問い合わせの件数よりも案件数の方が多かったそうで、「既存顧客からの再発注や、代理店からの依頼が多かった」などと理由を語りました。
インフルエンサーと企業とをマッチングし、タイアップ広告の制作や配信をする事業者の数も増えています。北島さんは「3年前だと約4~5社程度でしたが、現在は100社を超えるのでは」と予想。人気YouTuberらを自社で抱えマネジメントするGROVEのように、プロダクション機能をもった企業も増加傾向にあるようです。またクライアントが支払う料金は、一本の広告配信で1万円から1000万円近くになることも。一方、一つの案件にかかる制作費の平均額に関しては、同社の場合、15年当初で100万円を超えていましたが、18年では50~80万円に落ち着いているといい、「上がっているものもあるが、(事業者が増えている分)価格が落ちてきている」との見方を示しました。
北島さんによると、GROVEへの依頼は、商品やサービスなどの認知に加え、コンバージョン(CV)や会員などの獲得を目的としたものが約7割。その他イベントの集客を狙った依頼もあるといいます。訴求するターゲットは、案件数をベースにすると10~20代の男女が約6割を占め、続いて25~30歳後半の女性が3割超。クライアントの業界内訳に関しては、サービスアプリ(ゲームを除く)が30%、化粧品が20%、ファッションが10%、その他(食品や通信、観光など)が40%となっています。
(インフルエンサーらと打ち合わせする北島さん)
特徴はインフルエンサーとの「親近感」
SNS上で配信するタイアップ広告は、テレビCMといった従来の広告と異なり、発信者とユーザー双方向のコミュニケーションが特徴です。「タイアップ広告にはインフルエンサーとの親近感、納得感がある」YouTuberやInstagrammerを起用する長所について、北島さんはこのように話します。また「15秒程度のテレビCMでは、よほど刺さるクリエイティブではない限り自分ごと化はしないと思う」と述べ、「自分が憧れ、フォローしている人物のライフスタイル。また使っている物。その親近感こそが効果につながりやすい」としています。加えてSNS上での配信は、広告のコンセプトや配信日時を柔軟に決められる特徴もあり、クライアントから依頼を受けたその日に配信することもあるというから驚きです。
さらにタイアップ広告を掲載するSNS媒体の使い分けも重要になっています。北島さんによると、ファッションやアパレルのように、ビジュアルで訴求するものについてはInstagram。一方、ユーザーの疑似体験が必要とされるゲームなどについてはYouTubeが適しているといいます。近年は、新製品の情報だけではなく使用方法などに関する動画のニーズも増えているそうで、Instagramでブランディングを図り、YouTubeで使い方の動画を配信するなど、複数媒体を使った配信も行われています。
特にYouTuberを起用したタイアップ広告の市場では、ゲームやサービスアプリ(ゲーム除く)、玩具業界などがクライアントの半数以上を占めるとみられています。北島さんは「マーケットで一番多い業界はゲームや玩具業界で、この二つが市場全体の半数近くを占める」と説明しました。
業界特有の課題も、広告代理店に求める役割とは
タイアップ広告を巡る市場の成長を明かす一方、北島さんは業界の課題も挙げています。YouTuberやInstagrammerといったインフルエンサーのほとんどは10~20代を中心とした若年層。このため広告の配信過程では、配信予定時間の超過や漢字の間違いといったトラブルも少なからず発生するようで、「(インフルエンサーは)プロのタレントでもなければ、プロの広告メディアでもない」と業界の特性を語りました。またタイアップ広告の商品を扱うある企業では、クライアントよりもインフルエンサーの意向を優先せざるを得ない独特のビジネス構造になっているといい、頻繁にトラブルも起きているそうです。
この課題に対してGROVEでは、過去のトラブル例などをクライアントに説明した上で、配信内容やインフルエンサーの割り当て、使うSNS媒体などを計画。動画制作などを依頼する外部YouTuberらにトラブルが発生した場合、同社が抱えるインフルエンサーの中から、その人物の属性に近い人を代わりに当てるなどして対応しているといいます。北島さんは「そこがプロダクション事業をもつ強み」と主張し、「(マネジメント契約をしている自社のインフルエンサーは)普段コミュニケーションを取っている分、コントロールしやすく、リカバリーもしやすい」と語りました。
(インフルエンサー・マーケティングの将来について語る北島さん)
「デジタル面を扱う代理店さんが我々の業界に加わり、効果検証をしてほしい」デジタルマーケティングなどを行う広告代理店が果たすべき役割について、北島さんはこう説明します。「インフルエンサー・マーケティングの業界では、広告の効果がまだまだ見える化できていない。それこそアイレップさんのような代理店は、CVなどの数値をベースに広告を運営し、PDCAを回しているイメージがある。もっと業界の中に入ってほしい」と期待を寄せています。
さらにアイレップを含めインフルエンサー・マーケティングに関わる事業者に関して、北島さんは「(インフルエンサーは)メディアとしての一面をもつ一方、タレントとしての側面も持っている」と説明。「インフルエンサーとクライアント、双方のコントロールなどにも協力してもらえれば」と締めくくりました。
執筆者 DIGIFUL編集部
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